Project Story
プロジェクトストーリー
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宣伝と公開が同時スタート!?ショートドラマ宣伝の面白さ
インタビュー:大曲 智子
全2回連載
au×アスミック・エースによるショートドラマ作品制作プロジェクト「STUDIO sauce」は、これまで映画を作ってきたアスミック・エースにとって真逆とも言える「超短尺・縦型」のドラマに挑戦する企画でもある。さらにネット上で鑑賞するという視聴環境が限定された現代的なフォーマット。不特定多数のネット上の人々にどのように周知をしていったのだろうか。プロデューサーの木内悠介、竹迫雄也、そして宣伝プロデューサーの佐藤みなみにも加わってもらい、ショートドラマならではの宣伝の苦労と面白さを語ってもらった。
前回は、製作から初めてのことだらけだったというお話を伺いましたが、宣伝も難しかったのではと思います。佐藤さんが「STUDIO sauce」宣伝プロデューサーに選ばれた経緯というのは?
佐藤:私は2023年まで10年ほど宣伝部に在籍しており、2024年1月からはマーケティング推進部というリサーチ周りの部署に移動しました。その中にデータ的観点から企画を立ち上げるチームがあり、そこから派生して、このショートドラマ企画に参画したという流れですね。
ネット上で展開するショートドラマの宣伝を始めるにあたって、どんなことを考えましたか。
佐藤:基本的に劇場映画の宣伝とはプロセスが違います。劇場映画の宣伝は、公開までの期間にプロモーションをし、公開当日、爆発力を持って劇場に来てもらうようにすること。オンラインとオフラインの広告を混ぜ、リアルで接触させたり、ウェブ広告を回したり。一方、このショートドラマは宣伝期間がなく、突然アカウントを立ち上げて見てもらうものだったので、公開と宣伝のスタートが全部一緒でした。ネット上でしか見られないという性質上、どうしてもウェブ広告しか回せないので、広げる術も限られるな、難しいなという思いはありましたね。
実際はいつ頃から宣伝をスタートさせたのでしょうか。
佐藤:第1弾『てのひらラブストーリー ~婚活五重奏~』の時は、公開と同時にSNSやYouTubeアカウントを立ち上げました。当初はまったく知られていなかったので、なかなか広がっていかず。知ってくださっているのはキャストのファンの方たちのみでした。ベタな方法ではありますが、ウェブニュース記事を仕込むなど地道な方法からやっていきましたね。今後はインフルエンサーの方に宣伝隊長をやっていただいたりという展開も考えていきたいと思っています。
前例がないので相当に難しいですね。
佐藤:弊社以外でショートドラマを作られている企業様を見ると、もともとアカウントを立ち上げていて、そこをベースにしてショートドラマを展開されている事が多いなと。テレビ局さんのショートドラマなら、局で持っているリソースで宣伝できる。けれど弊社はそういったものがなかったので、「ゼロから立ち上げて認知させるって本当に大変だな」と。10年以上宣伝をやってきましたが、初心に戻った気持ちでした。
宣伝とは何かという問題に立ち返ったんですね。秘策はありましたか。
佐藤:作品制作と同時並行で宣伝を考えなければいけなかったので、企画段階から私も入らせてもらいました。そこは私としても新たな取り組みだったので、非常に興味深かったですね。作品を作りながら「これは宣伝に使える」と考えたり、一緒に走っていくことができました。
竹迫:このショートドラマは宣伝と表裏一体のコンテンツ。佐藤には最初からプロデューサーと一緒に動いてもらい、脚本の選定から改稿、キャスティングまで含めて、僕たちと一緒に動き、一緒に考えてもらったことが非常に効果的でした。
宣伝プロデューサー的に脚本についてどんなことを考えましたか。
佐藤:宣伝目線というよりは、自分自身がこれまで積み上げてきた経験値から、「この方がいいんじゃないでしょうか」というのを、木内、竹迫と議論しながら話していったという感じです。ネットに特化したコンテンツになるので、ベタですが、SNSのフォロワーが多い方や、お笑いの方にも入っていただいたり。アイドルの方だとファンの熱量がすごいので、ぜひそういう方にも入ってもらいたいという話はしましたね。
企画段階から宣伝が入るというのは珍しいことでしょうか。
佐藤:他社さんはあるのかもしれませんが、弊社ではあまりないですね。基本的には出来上がりつつあるものに対して後から宣伝が入っていくっていう形が多いので。個人的にもとても学びの多い体験でしたね。
今のところ特に大きな手応えがあった施策というと?
佐藤:すでにアカウントが立ち上がっていたこともあり、第2弾『Toshio-free-Wi-Fi』では本編公開前にキャストの匂わせ動画を出しました。本編公開前からキャストのファンの方に気づいていただいたので、その中で公開を迎えられたのは大きかったですね。
実行したことがすぐ結果に出ますからね。
佐藤:そうなんです。リポストやいいね、再生回数などすべてが数字ではっきりと見えてしまうので、わかりやすくもあり恐ろしくもあり(笑)。数字が出るということは、一般の人にも流行っているかそうでないかの判断がしやすいということでもある。現代の人たちは流行っているもの、話題になっているものが見たいというのがあるので、これからも話題作りに注力していきたいと思っています。
コスパ、タイパという言葉を誰もが使うようになっている時代だけに、確実に面白いものを見たいと思う人は多いでしょうね。
佐藤:ショートドラマは短ければ短いほどいいという話にもつながるのですが、話題になっている動画って短くて面白いものなんですよね。『Toshio-free-Wi-Fi』は2月ぐらいまで継続的に本編を配信していくので、視聴を継続していただけるよう、話題は絶やさないようにしていきたいです。
『てのひらラブストーリー』がオムニバスだったのに対し、『Toshio-free-Wi-Fi』は全10話の連続ドラマ。そういう点での宣伝方法はありましたか。
佐藤:『てのひらラブストーリー』は大和田伸也さんだけが全話に軸として出演していただいたのですが、メインキャストはそれぞれの話で違っていたので、キャスト取材が難しかったです。『Toshio-free-Wi-Fi』は沢村一樹さん、堀内敬子さん、池田彪馬さん、影山優佳さんが長く出演しているので、メイキングやコメントなど本編以外のコンテンツも作ることができました。今後も、本編の再生を補足できるようなコンテンツを出していきたいです。
ユーザーとしても、ドラマに対する思い込みや考え方を一新させてくれるのがショートドラマだなと思いました。
佐藤:個人的には、ショートドラマって気軽さゆえにチープに見られがちだったので、そこを変えたいと思っていました。今回は普段、映画やドラマに携わっている方々が本編を作っているので、ポスターなどのビジュアルも映画寄りにしています。普段、映画のビジュアルを作っているデザイナーさんに依頼し、各ドラマのビジュアルを作りました。それぞれちゃんと特写(場面写真ではなく特別に撮影した写真)を撮るのは大変でしたが、見やすくするためのこだわり、映画会社が本気を出して製作しているショートドラマとしての立ち位置を意識しました。
気軽に作れて気軽に見れるようでいて、実は映画会社ならではのノウハウとこだわりがたくさん詰まっていますね。最後に、縦型ショートドラマの製作・制作・宣伝をここまでやってきて感じたことがあれば教えてください。
木内:『てのひらラブストーリー』も『Toshio-free-Wi-Fi』も、関わったほとんどの方が、縦型ショートドラマは初挑戦でした。みなさん完成を楽しみにしてくれていましたし、「新しい取り組みに呼んでくれてありがとうございます」と言ってくださる方が多くいて。今ってドラマ離れ、映画離れと言われる時代でもありますが、気軽にショートドラマに触れることで、そこからキャストやスタッフに興味を持っていただき、映画やドラマを見るという流れもあるんじゃないかなと。ショートドラマがその架け橋になればと願っています。
竹迫:佐藤に最初から入ってもらったことで、1つのアカウントで本編も切り抜き動画もメイキングも並ぶという現在の形になったわけですが、切り分けずに全部まとめて1つのコンテンツとして楽しんでもらえているのがとてもよかったなと思います。現場は現場、宣伝は宣伝ではなく、本編を見た後にすぐにメイキングも楽しめる流れを作ることができましたから。今後もみなさんを楽しませる充実したコンテンツ作りを続けていきたいです。
佐藤:劇場映画は基本的に公開日がゴールで、その後はやれることが限られていますが、ショートドラマの場合、公開がスタート。すぐに結果が出てトライアンドエラーができるので、公開と同時にいろんな宣伝手法を試せることは面白いです。終わりがないので、ずっと大変ではありますけどね(笑)。1年後ぐらいに今公開中のドラマの切り抜きが急にバズるかもしれない。予想もしないことが起きる面白さを私たちも楽しんでいきたいです。
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