Project Story
プロジェクトストーリー
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映画を五感で楽しむ「コトづくり」
全2回連載
インタビュー・文:大曲 智子
2023年5月26日に公開された映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』だが、その年の9月8日より、東京(池袋)、大阪(梅田)、福岡(博多)にて「岸辺露伴ルーヴルへ行く 体験型イベント 〜ようこそ、岸辺露伴の世界へ〜」が開催された。公開から約3か月後にイベントを行ったのはなぜなのか。また、このイベントの狙いは何だったのだろうか。
このイベントを担当したコンテンツ販売部の有吉篤史、井ノ口智裕に話を聞くと、イベント開催のきっかけとなったのは第1回インタビューでも話題になったあの注目グッズだった。
2023年9月〜10月に全国3ヵ所で体験型イベントが開催されました。邦画の実写映画でイベントを行うのは珍しいように感じますが、どのような経緯で開催が決まったのですか?
有吉:実は、第1回で井ノ口から説明があった「S.H.Figuarts 岸辺露伴(映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』)」)のフィギュアの商品化がきっかけでした。このフィギュアは、バンダイグループの中でもハイエンド向け商品を作るバンダイスピリッツさんの「S.H.Figuarts」レーベルのものとなり手や肘、関節など細部にわたる高度な可動域を誇るハイクオリティなフィギュアブランドです。そのつながりで、イベントの開催を同じバンダイグループのバンダイナムコアミューズメントさんが我々と展示内容を企画し、行ってくださいました。なのでこのイベントはこのフィギュアのプロモーションという位置づけでもあったんです。
映画公開が5月で、イベントは9月だったのも、フィギュアのスケジュールがあったからでしょうか?
有吉:それもあります。このような精巧なフィギュアって制作にかなりの期間を要することもあり、すぐに入手できないもので、予約してからお手元に届くまでに時間がかかるんですね。また、丁度9月にAmazon Prime Videoで『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』の独占配信がスタートするなどもあり、そこに合わせる形でフィギュアのお披露目展示が出来れば、本作品の盛り上がりのもう一山作れるかなという思いから、この時期での開催を目指しました。バンダイナムコアミューズメントさんの担当者はこれまでも大成功しているTVアニメ「ジョジョの奇妙な冒険」の世界観体験イベントでもある『JOJO WORLD』手掛けていた方なので、関連作品でもある本作への理解力もとても高く、加えてご自身も熱心なファンでもあり、ファンであれば何をしたいかなどの貴重な意見を取り入れながら、実際出演者が着た衣装や実際に使用された小物類の展示にはじまり、映画本編にちなんだ没入感の味わえるアトラクションを作るなどの企画をたてていきました。また、会場ではそれだけでない、会場限定グッズの販売や本作の世界観を取り込んだ限定メニューでの飲食を楽しんでいただきつつ、フィギュアもリアルでじっくり見ていただいて、興味を持っていただいた方にはその場で予約できるようにして、プロモーションの場でありつつもファンの方たちに「体験」として喜んでもらえるものを作りましょうということになりました。
イベントのアトラクションの目玉は、自分だけのオリジナル“ヘブンズ・ドアー”が作れる「ヘブンズ・ドアー 〜今、あなたの心の扉は開かれる〜」ですね。名前や生年月日など項目を入力していくと、その人の人生が“ヘブンズ・ドアー”として印刷されるという。
有吉:アトラクションの中では一番注目していただきたいものでした。システムとしてはシンプルなもので、置いてある端末に決められた何個かの質問を答えていくと、それが自分史としてのヘブンズ・ドアーとして印刷されるというものなんですが、あのヘブンズ・ドアーをオリジナルで作って持って帰れるということで反響を呼び、休日のみならず平日でも列が出来て整理券対応になるなど好評でしたね。当社の中でも本作品に関わるメンバーの多くから「あのヘブンズ・ドアーを作れたらいいよね」なんて話が出ていたので、それをこのイベントで具現化していただきました。会場では撮影で実際に使われたヘブンズ・ドアーも展示し、そちらも人気がありましたね。
イベントでもコラボフードが販売され、こちらも“黒”がテーマカラー。徹底的に世界観を意識しており、ぜひ食べてみたいと思うものばかりでした。
有吉:主催していただいたバンダイナムコアミューズメントさんは、そのあたりに手を抜かないんですね(笑)。レンジで温めたような料理ではなく、厨房のある施設を遣い、テナントに入っているレストランの協力を得てちゃんと調理している。私も全種試食したのですが、お世辞抜きにとてもおいしかったです。『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』に出てくる好きなセリフを選んでプリントできる「フォーチュンラテ」も、心に残るセリフが多いならではの商品になりました。
イベント会場も来場されるお客様も含め、全体的に黒を基調としたシックな空間という印象を抱きました。
有吉:高橋一生さん演じる露伴もそうですし、飯豊まりえさんが演じられてた泉京香も、真っ黒ではないですが大人っぽいモードテイスト。『岸辺露伴』を含め、荒木飛呂彦先生が描かれる作品の登場人物はどれもスタイリッシュですよね。そういった部分も作品人気の理由のひとつだと思いますので、イベントにもそういう要素を出していくよう心がけました。シリーズごとに特徴的なキャラクターがいる『ジョジョ』シリーズですが、中でも岸辺露伴はちょっと特異なキャラクター。そんな露伴の魅力も作品人気につながっているのかなと思います。
どの作品でもできるものではないと思いますが、このようなイベントをやってみていかがでしたか。
有吉:そうですね。正直、実写の作品でなかなかこういうイベントって難しいんですよね。公開近くにプロモーション的に簡易な展示イベントを行うことはあったりはするのですが、このイベントは映画公開から3ヶ月ほど経ってのイベントでした。映画を一通り楽しんだお客様がまた楽しめるイベントって果たしてどうなのかという思いはあり、それ故に「来ていただけるのだろうか」という不安もあったのですが、結果多くの方にお越しいただけて本当に嬉しかったです。
ちなみに、イベント開催のきっかけになったフィギュアの展示はいかがでしたか。
井ノ口:フィギュアの発売についてのリリースはすでに出していましたが、現物を展示するのは初めてだったので、すごい反響がありましたね。まだ監修を進めている段階だったので、これは気合を入れてさらにクオリティの高いものを完成させたいですねと、現場でバンダイスピリッツさんともお話ししていました。
有吉:フィギュアのニュースリリースを出した時に一番嬉しかった反響として、フィギュアの商品画像を「映画の場面写真かと思った」と思われた方がすごく多くて。それだけ高橋一生さんが演じる露伴らしい表情とポーズを再現できていたものだったので、展示にも手応えを感じましたね。
実写でありながら2次元の要素を持っている、改めて唯一無二な作品だなと思います。
有吉:そうなんですよね。だからこそこの経験を別作品にいつも活かせるかというと、それはそれで難しそうだなと(笑)。やはり本作品は類まれなる大作である『ジョジョの奇妙な冒険』という漫画原作に基づく世界観とキャラクターをベースにしている強みがあると思います。映像展開としてアニメでは割と普通の取り組みでも、途端に実写では難しくなる場合が多く。この実写の『岸辺露伴は動かない』シリーズはなんというか実写とアニメの中間に位置するような映像作品だと私は思っています。だからこそ両方のいいところをフルに活用できたと思いますね。
<発売情報>
「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」Blu-ray/DVD
2024年7月3日(水)レンタル開始
2024年7月26日(金)発売
発行・販売元:NHKエンタープライズ
©2023「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」製作委員会
©LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社
▼詳細はこちら▼
https://www.nhk-ep.com/special/rohan/