Project Story

2022.09.30
第1回
第1回
映画 オッドタクシー イン・ザ・ウッズ

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Project Story#14

劇場版でファンを増やすさらなる工夫

全2回連載

インタビュー・文:大曲 智子

今年4月1日に公開された、『映画 オッドタクシー イン・ザ・ウッズ』。2021年4月から全13話に渡ってTV放送されたアニメ『オッドタクシー』を再構成し、さらに新規シーンを加えた劇場版アニメだ。

TVシリーズからの熱いファンがいる一方、これまで作品に触れたことがない人もいる。二層のターゲットに向けてどんな宣伝施策を考案したのだろうか。『オッドタクシー』プロデューサーのひとりであるP.I.C.S.の平賀大介氏と、アスミック・エースで本プロジェクトを担当した事業企画部の竹迫雄也に、ファンベース作品の宣伝プランについて話を聞いた。

『オッドタクシー』のTVシリーズは、深夜放送から始まり、後から口コミで面白さが伝わった作品でした。そのTVシリーズを再編集+新規シーンを追加した劇場版を制作するにあたって、P.I.C.S.さんで懸念されたことはありましたか。

平賀:TVシリーズから熱量高く見守ってくれているファンの方々と、劇場版をきっかけに初めて『オッドタクシー』に触れる方がいる。情報量の違う観客がいるということで、そこが一番難しいなと思いましたね。とはいえどちらにも楽しんでもらえる作品にしたかったので、脚本の此元和津也さんをはじめ、木下麦監督や編集チームで試行錯誤しながらの映画の企画がスタートしました。

『オッドタクシー』のファンは、ネタバレをせずにTwitterなどで作品の魅力を語ったりと、楽しみを奪わずに広めてくれているという印象がありました。なので映画化に際しても、ネタバレについての心配はなかったのでは?

平賀:本当にありがたいことに、ファンのみなさんは、肝心なことはネタバレしないようにしてくださったんですよね。ネタバレしないように、でも話題にしようとしていただくという、絶妙に難しいことをやってくれていて(笑)。自分が感じた衝撃を友達にも感じてほしい、とにかく見てほしいという広め方をしてくれていたので、そこは映画化にあたっても心配はありませんでしたね。

『オッドタクシー』が映画化すると聞いて驚いた方は多いと思うのですが、アスミック・エースで配給することになったのはどんな経緯があったんでしょうか。

平賀:以前からお付き合いのあるアスミック・エースの豊島雅郎さんから、問い合わせがあったんです。「社内で『このアニメがすごく面白い』と話題になっているんですけど、映画化の予定はありますか」って。その時はまだ、TVシリーズの後の展開は決まっていなかったので、驚いたんですよね。

TVシリーズの放送が終わった後も、口コミでどんどん広がっていたので、社内でも「このまま終わるのはちょっと寂しいね」という話をしていたところだったんです。最終話の最後で気になる終わり方をしていますからね。でも構造的にも(TVシリーズの)シーズン2とかは出来ないなと思っていて。そこにそういうお話をいただいて、「映画か…」と。映画という別の切り口で新しい見せ方ができたら面白いかもと思いましたね。お声がけいただいたのがきっかけになりました。

アスミック・エース側ではどんなことが起こっていたんでしょう。

竹迫:アスミック・エースは、一社員の意見や熱量をすごく大事にしている会社なんです。そこから企画の種が生まれて、映画にすることでファンの人に届けられるものがあるならという考えですね。なので社内では常にアイデアを募集しています。社内で『オッドタクシー』ファンが多かったということで、平賀さんに問い合わせて映画化につながったというのは、まさに『オッドタクシー』らしい広がり方だなと思います。

実は私も『オッドタクシー』ファンとして、プロジェクトチームに名乗りをあげた一人なんです。TVシリーズからの大ファンで、「映画になったらいいな」と密かに妄想していました(笑)。すると社内でそんな声があがっていたので、ぜひ私もアサインしてくださいと手を上げました。本来ならばアニメ事業部の管轄かなと思っていたのですが、マーケティング推進部から竹山美奈子、アニメ事業部から岡田佳代、そして事業企画部から私がアサインされ、部署の垣根を越えたプロジェクトチームが発足しました。

『オッドタクシー』のムーブメントを考えると、すぐに映画をファンの人たちに届けたほうがいいだろうということで、社内での動きもスピーディでしたね。

そしていざ作品を宣伝するにあたって、まずはどんなことを念頭に置いていましたか。

平賀:TVシリーズ放送時の宣伝では、YouTubeでTV放送と連動したオーディオドラマを配信したりと遊び心を大切にしてきました。YouTube施策はよくあることかもしれませんが、『オッドタクシー』の場合、サブコンテンツや宣伝周りも、本編アニメと同じ熱量で、しっかり作り込んだモノを発表できたという自負はありました。なので映画になっても、その精神は引き継いでいきたいと、アスミック・エースさんとの最初の会議でお伝えしました。P.I.C.S.とポニーキャニオンさん、アスミック・エースさんの三社で、立場に関係なく自由な雰囲気で、あらゆることをしっかりと話し合いながら進めていきましたね。

竹迫:TVシリーズでP.I.C.S.さんとポニーキャニオンさんが行ってきた、作品とファンへの寄り添い方を、映画でも大事にしたいと思いました。映画のターゲットの軸はTVシリーズをご覧になっていた方なんですが、当時リアルタイムで視聴できていなかった、盛り上がりを肌で感じられなかった方もいらっしゃったと思うので、映画で一緒に楽しみましょうというお祭り感を出すことも意識しましたね。

実際に映画で行った『オッドタクシー』らしい宣伝施策というと?

平賀:TVシリーズのストーリーの中で12月25日に作戦がスタートするという設定があったので、映画化の解禁もそこに合わせました。アニメ本編の中で、渋谷駅前のビジョンを見上げたり、渋谷の街をタクシーで走っているようなシーンがあるので、その世界観の中で映画化を発表したいなと思い、2021年12月25日に向けてTwitterでカウントダウンを始めました。

その前日である12月24日に、PUNPEEさんとスカートの澤部さんが主題歌『ODD TAXI』を歌った「THE FIRST TAKE」の映像が公開されました。あれも情報解禁への流れだったんですか?

平賀:いえ、実はあれは偶然なんですよ。PUNPEEさんと澤部さんが「THE FIRST TAKE」に出られたのはアニメ側で仕込んだことではなくて。たまたまお二人が出演されるにあたって、このタイミングなら『ODD TAXI』をやりたいねということで選んでくださったんです。カウントダウンは「THE FIRST TAKE」のことだったのかと思われた方もいたと思うんですが、いやまだ一日あると。じゃあ一体なにがあるんだと、より注目が集まった。その結果、映画化の情報が大きく話題になりました。アーティストさんから『オッドタクシー』の歌を歌いたいと言ってくださったことは、ワンチームでやれている感覚があって嬉しかったですね。

公開情報:2022年4月1日(金)TOHOシネマズ新宿ほか全国公開
コピーライト:©P.I.C.S/映画小戸川交通パートナーズ
配給:アスミック・エース