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2024.06.13

『ひゃくえむ。』仏・アヌシー国際アニメーション映画祭Work in Progress部門に岩井澤健治監督ら登壇

陸上競技の世界で、「100m」というわずか10秒間の一瞬の輝きに人生を懸けた人々を描く情熱の物語『ひゃくえむ。』(2025年劇場公開)。
本作は「チ。-地球の運動について-」で手塚治虫文化賞マンガ大賞を史上最年少受賞した魚豊の連載デビュー作「ひゃくえむ。」(講談社刊)を原作としています。
監督は、長編第1作『音楽』で「アニメ界のアカデミー賞」と呼ばれる米アニー賞ノミネートはじめ多数の映画賞で高い評価を受け、国内外から注目が高まる気鋭のクリエーター・岩井澤健治が手掛けます。

この度、フランスで開催中の世界最大規模のアニメーション映画祭であるアヌシー国際アニメーション映画祭にて、フランス現地時間6月11日(火)に「Work in Progress」のセッションがSalle Pierre Lamyにて開催され、岩井澤健治監督、作画監督・キャラクターデザイナーの小嶋慶祐、美術監督の山口渓観薫、プロデューサーの武次茜が登壇し、フランス現地の映画ファンや世界の映画関係者に向け、プレゼンテーションを行いました。
今回『ひゃくえむ。』が選出された「Work in Progress」は、映画祭の中でコンペティションと並んで高い注目を集める部門で、世界中から選ばれた制作進行中のアニメーション作品について制作者自らが紹介するプログラムです。

岩井澤監督は、長編1作目の『音楽』が2020年アヌシー国際アニメーション映画祭長編部門 最優秀オリジナル音楽賞を受賞し、本映画祭への参加は本作が2度目となります。
当日は、朝早くからのセッションにも関わらず、会場前には本作のプレゼンテーションを待ちわびる人たちで長蛇の列ができ、キャンセル待ちのための列整理が行われるなど現地での注目度の高さが窺えました。
来場者で埋め尽くされた会場に登壇した岩井澤監督は、「映画化するうえで100mは約10秒で試合が終わってしまうので、その短い時間をいかにドラマチックに描けるかはじめは難しさを感じましたが、競技中だけでなく、本作では試合に臨むキャラクターの葛藤やその姿勢を描きたいと思っています。映画を作る際に私が意識しているのは、その作品にしかない特別なシーンを描きたいと思っているので、本作にしかない挑戦的なアプロ―チをしています。

キャラクターデザイン・作画監督として制作に臨む小嶋慶祐は「本作のキャラクターデザインは、実写の印象に近いデザインをしていますが、原作の漫画らしさを大切に、どう残していくかを意識して描いています。また、実写だと成立するカットの繋がりが、アニメだと表情やパース感が少し違うだけで繋がっていないように見えてしまうことがあります。シーン全体の繋がりをうまくコントロールするため、シーン全体のキャプチャを1枚にまとめて、一気に絵を入れていくことを思いつきました。
これは日本で一般的なフローではありませんが、効率よく作業するため、本作で新たな手法に挑戦しています。」と制作の表現手法について語りました。

美術監督の山口渓観薫は、「監督から『シンプルに単純化したタッチではなく、できるだけリアルに忠実に描いてほしい。』というオーダーがあり、必要があれば写真をベースにトレースし、着色する方法をとっています。日本では背景美術はほとんどがデジタルで描かれることが多いですが、本作では手描きの絵の厚みを表現したくて、アナログで描くことにこだわっています。また、今回、監督のリクエストで「背景美術動画」を制作しています。例えば、あるカットでは約3秒間のカットで29枚の背景美術を描いているのですが、主流ではない表現だと後で聞いて驚きました。大変な作業ですが、私たちなりのやり方で作品独自の表現を模索しています。」と制作裏の苦労を語りました。

「ひゃくえむ。」背景美術 ©魚豊・講談社/「ひゃくえむ。」製作委員会

既存の手法にとらわれない最前線での取り組みに、観客は終始熱心な様子で聞き入り、約75分のプレゼンテーションを終えると、会場を包み込む大きな拍手が続き、大盛況のなか降壇しました。プレゼンテーション後には会場前に岩井澤監督はじめスタッフ陣のサインを求める列ができ、なかには一緒に働きたいと名刺を手渡すクリエイターも見られました。
『ひゃくえむ。』は、海外映画祭を視野に入れながら、2025年全国公開に向け制作中です。

岩井澤健治監督 現地の反響を受けて
前作『音楽』の時はコロナ渦中でオンラインでの参加だったので、やっとアヌシーに来られました。
私自身も一緒に登壇したスタッフも時間内に上手く伝えられるか、どんな反応が返ってくるのか緊張や不安もありましたが、観客のみなさんは終始真剣に聞いてくれました。
アヌシーは世界最大のアニメーション映画祭で、観客が作品を楽しもうという姿勢があり、アニメーションに対する前のめりな反応を感じました。そういった現地の雰囲気を肌で楽しむことができました。
今回の『ひゃくえむ。』は、商業作品としてチームでの制作に挑戦しますが、制作フローも含めて型破りな作品として評価いただけた前作『音楽』のようなインディペンデント制作の良さも残しながら、自分にしかできない表現方法や作品になるよう制作しています。日本と世界の皆さんにぜひ楽しみに待っていてほしいと思います。

クレジット

『ひゃくえむ。』2025年全国公開
原作:魚豊「ひゃくえむ。」(講談社『KCデラックス』所載)
監督:岩井澤健治
キャラクターデザイン・作画監督:小嶋慶祐
美術監督:山口渓観薫
プロデューサー:寺田悠輔、片山悠樹、武次茜
アニメーション制作:ロックンロール・マウンテン
製作:ポニーキャニオン、TBSテレビ、アスミック・エース
©魚豊・講談社/「ひゃくえむ。」製作委員会